自己超越瞑想

  前述しましたように(クリック>> 「瞑想の種類」 )、どの方にも有効となる瞑想法があるわけではありませんので、お一人お一人に最適な瞑想法を探すことが大切です。

【自己超越瞑想】  

  トランセンデンタル・メディテーションとも呼ばれるこのスタイルの瞑想では、心の中でマントラに集中する方法が一般的です。このため「フォーカス・アテンション瞑想」(クリック>>)と同じように、注意制御の側面を持ち合わせているのは確かなのですが、その本質は持続的な注意を伴う認知的な意識を超えて(超越)、「静寂」な領域へと導く瞑想プロセスとされています。この状態の意識は、時間や空間という枠を失った無限の意識とされ、「没我」、「空」の体験とも表現されます。

 この意識状態は人間の意識の中で最も落ち着いた状態とされ、私たちの心は特段の努力を要することなくこの状態へと自然と導かれると考えられています。自己超越瞑想の意識状態を理解することは少々難しい感じがするかもしれませんが、私たちが「瞑想」と聞いた際にイメージするスタイルにある意味では最も近いかもしれません。

  Jeff Tarrant 博士の意見を参考にしますと、以下の項目が良く当てはまる方々に自己超越瞑想瞑想が有効と考えれます1)。 (クリック>> 「 NeuroMeditation Institute 」 ホームページ)

☑ いやなことが頭に浮かび、頭から離れないことがよくある

☑ 座って静かにしようと思っても、静寂な状態になかなかなれない

☑ 自分が考えることや行動について、批判的になってしまうことがよくある

☑ 思考や感情のループから抜け出すことができなることがよくある

☑ 意識を開くことが難しい

☑ いつもビリビリしている

☑ リラックスすることが苦手だ

☑ 一つの見方に固執してしまうことがよくある

☑ 不快な感情をコントロールすることが難しいことがよくある

  自己超越瞑想については、多くの研究がおこなわれています。一貫して、観察されてきた現象は、α(アルファ)帯域の中で低い周波数帯域(8-10Hz)のパワー値や位相同期性(専門的にコヒーレンスと呼ばれる指標)が増大するというものです。

  上記のα帯域の増大等は、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」(クリック>>)のコア・ノード、Hub(ハブ)と考えられている帯状回後部・楔前部(PCC/Precuneous)が関与している可能性が指摘されています。

  自己超越瞑想を行っている際の デフォルト・モード・ネットワーク(DMN) の状態には特徴があります。フォーカス・アテンション瞑想やオープン・モニタリング瞑想を行っているときのようにはその活動が抑制されないことが報告されています2)。このことが、自己超越瞑想の実践に「努力不要」と言われる所以なのかもしれません。

  α帯域の増加となりますと、単に目を閉じているときとに観察される デフォルト・モード・ネットワーク(DMN) の活動の増加とこれに伴う「心のさまよい(mind wandering)」とはどのように違うのでしょうか? この疑問については今後精査が必要となりますが、アルファ帯域 (8-10Hz) について、前頭部(Fz)と頭頂部(Pz)の間の位相同期性(コヒーレンス)の増加なども報告されている点がポイントと考えられます 3)

  自己超越瞑想で増加するアルファ帯域の起源が デフォルト・モード・ネットワーク(DMN) に存在することが報告されておりますので、忙しなくDMNが活動している状態というよりは、前部DMNと後部DMNの秩序だったシンクロニシティは、心の静寂を反映した活動と考えられます。

  以上のことから、自己超越瞑想を目的としたニューロメディテーション(NeuroMeditation)の場合には、 デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)がそのターゲットとなりますが、フォーカス・アテンション瞑想、オープン・モニタリング瞑想とは異なったアプローチが必要となります。   

【文献】

1.Jeff Tarrant. Meditation Interventions to Rewired the Brain: Integrating Neuroscience Strategies for ADHD, Anxiety, Depression & PTSD. Wisconsin:PESI Publishing&Media.2017

2.F, Parim N. (2017). Default mode network activation and Transcendental Meditation practice: Focused attention or automatic self-transcending? Brain and Cognition, 111: 86-94.

3.Travis, F., Haaga, D.A.F., Hagelin, J. et al. Cogn Process (2010) 11: 21. https://doi.org/10.1007/s10339-009-0343-2

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はお断りします