脳波の見方

 ニューロメディテーションがニューロフィードバックをベースとしていることをご説明してきました。

 では、フィードバック源となる脳波信号は、一体どういった情報をもとに瞑想者の脳の状態を捉えているのでしょうか?

 基本的には脳波の3つの情報をもとフィードバックを行います。3つの情報とは、①周波数(Frequency)、②パワー値(Power)、③位相(Phase)です。順番に説明しましょう。

1. 周波数(Frequency) :  脳が奏でる楽器の種類

  どのような脳波も、異なるリズム(周波数)の波形に分解することができます。

 上の図は実際の脳波ではありませんが、脳波に似せてコンピュータで作成した波形です。このギザギザの波形のように一見複雑そうにみえる波形も、ある数学的な処理を加えますと(フーリエ変換)、この波形を構成している異なるリズムの波形に分解することができます。それが以下の波形です。

 実は、最初の図で示した複雑な波形は、この図の中で示す、異なる速さのリズミックな波形を単に足し合わせて作成したものでした。複雑な波形は単純なサイン波の組みあわせ(足し算)で構成されており、脳波を構成していたサイン波が刻むリズムには、遅いリズム(より上に位置するサイン波)から速いリズム(より下に位置するサイン波)が存在していることがわかると思います。

 この波形のリズムの速さのことを脳波では、①周波数(Frequency)と呼んでいます。アルファ波(α波)やシータ波(シータ波)などもこのリズム(周波数)の違いで区分した異なる速さの波のことをさしています。周波数の単位は、Hz(ヘルツ)で、数値が大きいほど速い周波数を表します。1秒間に4回のサイクルがあれば4Hz、10回のサイクルがあれば10Hzの波形などと表現します。

 大事なことは、この速さを表現する周波数が、脳に関するどのような情報を表しているのか?という点を理解しておくことです。 周波数(Frequency) は、 周波数は脳というエンジンの回転数と思ってください。 「どのように働いているか?」つまり働きの状態を表しているということです。一般には、周波数の値が速いほど(上図の下の波形ほど)脳波は活動状態にあり、遅いリズムほど(上図の上の波形ほど)休んでいるまたはアイドリング状態にあると言えます。

 同じ脳の場所でもその働き方によって、構成する回転数の成分のウェイトがかわってきます。活発に働いている脳の部位は、より速いリズムの周波数のエネルギー(エネルギーとは、次の「2」で説明する「パワー値」のことです)が大きくなり、眠くなった場合のように働きが鈍くなるとより遅いゆっくりとしたリズムの周波数のエネルギーが大きくなります。

 部位(電極位置や脳の領域) × 周波数(Hz)

 ニューロメディテーションは、上記の2つのパラメータを操作して、トレーニングのプラグラムを設定します。つまり、ある特定の部位を通して観察される脳活動状態の情報をフィードバックの情報源として使用していることになります。ある部位を活発にしたいときには速い周波数成分をターゲットにトレーニングをしますし、脳の活動を抑えたいときにはゆっくりとした周波数成分にフォーカスをあててトレーニングをします。

2. パワー値(Power) : 特定周波数がどの程度のエネルギーをもっているか

 1で見てきたように、脳はいろいろな周波数のリズムが混合して作られる波形です。脳波の形成に、各周波数の波形がどれくらい含まれるのか? この大きさは、特定周波数の成分のパワー値(Power)として表現されます。

 具体的には、基線からの波のピークの距離(振幅)を表す指標がパワーとなります。

 先ほど1で確認した波形のリズムの速さを表す周波数(frequency)は同じでも、その周波数が反映している脳の機能がどの程度の大きさとして脳波に含まれているのかはこのパワー値で確認します。

 ニューロメディテーションでも特定部位の特定周波数にターゲットをあてて、そのパワー値を増加または減少させるように、音や視覚刺激を通して瞑想者に伝えます(フィードバック)。このフィードバック情報をもとに、瞑想している方はトレーニングしたい脳の働きを反映した目的の周波数 (frequency)のエネルギーが、増加しているのか、減少しているのかを知ることができるわけです。

3. 位相(Phase) : 脳の演奏のタイミング

 最後の指標は、脳の活動のタイミング情報を表す位相(Phase)です。1の「周波数(Frequency)」でお伝えしましたように、脳の働きは様々な周波数の音を奏でる楽器のようなものです。それぞれのパートが、その楽器特有の周期的なサイクルで演奏しているわけです。

 位相情報は、脳の活動周期のタイミングを表現しています。脳の活動タイミングの情報は、0から2π(パイ)(0°-360°)のどこかのポイントに瞬間瞬間位置しています。

 もし、異なる2つの部位 (電極位置、脳の領域)が、何らかの関連性をもって活動しているときに、これらの部位は一定のタイミングをずらして周期的なサイクルを表現します。

   例えば、「自己超越瞑想」では、前頭部(Fz)と頭頂部(Pz)の間の位相同期性(コヒーレンス)が増加することが知られています(クリック>>)。 このためニューロメディテーションでは、前頭部と後頭部のアルファ1(α1:8-10Hz)帯域の波形について、位相情報をもとに両部位ができるだけ関連しあって活動するようにトレーニングすることがあります。このとき、この位相差情報をもとにしたフィードバック情報を瞑想者に提供します。

 少し専門的なお話しになりましたが、ニューロメディテーションとは脳波の ①周波数(Frequency)、②パワー値(Power)、③位相(Phase)の情報をもとに、瞑想者にフィードバック情報を提供することで、正確かつ効率的なトレーニングを実現します。

  ①周波数(Frequency)、②パワー値(Power)、③位相(Phase) の三つの指標は、最先端の脳科学領域の研究の中でも、研究者の方々が信頼をおく指標として使っています。ニューロメディテーションで提供するプログラムでは、これらの指標をコンピュータを使って正しく計算しています。

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