前述しましたように(クリック>> 「瞑想の種類」 )、万人に有効となる瞑想法があるということではありませんので、あなたにぴったりの瞑想法を探すことから始めてみましょう。
【フォーカス・アテンション瞑想】
この瞑想法では、ある特定の対象を選択して、これに意識的かつ持続的な注意をむけます。メンタルトレーニング法としては、「トップダウン・アテンション」機能を訓練する方法となります(アテンションは「注意」の意味です)。
注意を向ける対象としては、呼吸や臍下丹田などの身体の一部、ロウソクの炎などの視覚的イメージ、マントラなどのフレーズなどが選ばれます。
マインドフルネス瞑想では、自分の呼吸を対象として、このフォーカス・アテンション瞑想を実施することが多いようです。
呼吸に意識を向けるとは、鼻孔を空気が通る際の感覚や温かさであったり、呼吸にともなって膨らんだり、しぼんだりするお腹の様子に意識をむけるということです。「呼吸に注意を向けること」と「随意的、意識的に呼吸を行うこと」とは区別しましょう。最初はこの区別がなかなか難しいでしょう。つい力んでしまい、背中などに筋肉痛が起こることもあります。それでも気にせずに進めましょう。自分が呼吸する様子をやさしく「見つめる」つもりで行ってみてください。
瞑想中には、注意が対象から逸れてしまうことが必ず起きます。この現象は普通のことだと認識しておきましょう。このようなときにも価値評価を加えることなく(「なんで自分はこんなにすぐ気が散ってしまうのだろう…」などとは思わないで)、注意が逸れていることに気が付いたうえで、呼吸などの当初設定した対象に再び注意を向け直します。
アメリカのオレゴン州でニューロメディテーションのセッションや研究を行っている Jeff Tarrant 博士の意見を参考にしますと、 以下の項目が比較的あてはまる方には、フォーカス・アテンション瞑想が有効に作用しうると考えられます1) (クリック>> 「 NeuroMeditation Institute 」 ホームページ)。
☑ ボッ ~ っとして、心がさまようことがよくある
☑ 注意散漫になりやすい
☑ 他のことを考えたり、心配したりして不注意になることが多い
☑ 今、この瞬間に起きていることに集中することが苦手だ
☑ せっかちだ
☑ 同時に並行して、複数の仕事や作業を行うことが多い
☑ 非常に刺激的なことならば注意を維持できるが、そうでないと飽きやすい
☑ 課題に取り組んでいる間、必要な情報を保持していることが苦手だ
☑ ジッ~としていること苦手だ
☑ よく考えないで行動したり話をしてしまうことが多い
ニューロメディテーションとして フォーカス・アテンション瞑想を実施する場合に訓練のターゲットとなる脳のネットワークは、実行機能ネットワーク(CEN)とデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)です。さらにその切り替えを担当するセイリエンス・ネットワーク(SN)のトレーニングも大切となります(クリック>>「脳のネットワーク」)。
それぞれのネットワークのキーとなるHub(ハブ)領域に脳波計を使ってアクセスして、トレーニングを実施します。特に重要となるHub領域は、前頭葉の前部帯状回(ACC)または内側前頭野(mPFG) となります。これらの領域が注意活動に伴って発現するoscillation(振動)を選択的にピックアップして、瞑想者へのフィードバック信号として利用します。
具体的には、ベータ(β)帯域(20-30Hz)あるいはガンマ(γ)帯域 (30-40Hz) をターゲットとしてトレーニングします。ただガンマ(γ)帯域の訓練は、筋電図等のノイズ混入が起こりやすい帯域ですので、慣れないうちは誤ったトレーニングとなってしまう虞がありお勧めしません。
さらに、後部のHub領域となる後部帯状回/楔前部(PCC/Precuneous)のアルファ(α)帯域の調整を加えることもあります。
オープン・モニタリング瞑想、慈悲と慈愛の瞑想などの他の瞑想を行う場合にも、フォーカス・アテンション瞑想は基本となる瞑想です。フォーカス・アテンション瞑想は土台となる瞑想法となりますので、まずこの瞑想法をトレーニングし精神的な安定を得たうえで、他の瞑想法へと段階的に進むことをお勧めします。
【文献】
- Jeff Tarrant. Meditation Interventions to Rewired the Brain: Integrating Neuroscience Strategies for ADHD, Anxiety, Depression & PTSD. Wisconsin:PESI Publishing&Media.2017