オープン・モニタリング

 前述しましたように(クリック>> 「瞑想の種類」 )、どの方にも有効となる瞑想法があるわけではありませんので、お一人お一人に最適な瞑想法を探すことが大切です。

【オープン・モニタリング瞑想】

 この瞑想では、自分の頭の中で瞬間瞬間に湧き上がる思考や身体的感覚、感情的な経験について、一定の距離を保ちながら評価を加えないで観察することを繰り返します。「フォーカス・アテンション瞑想」(クリック>>)のような強いトップダウン的注意機能は使いませんが、オープン・モニタリング瞑想も、脳の注意機能をトレーニングする要素が含まれています。

 オープン・モニタリング瞑想は、体の状態や感覚、感情、思考に焦点をあててこれらと向き合う訓練を行いますので、自己への気づき、セルフ・モニタリング(自分の行動や考えや感情を自分で観察するメタ認知力 )を向上させることが知られてます。この瞑想によって、過食や喫煙、飲酒その他依存的な不健康行動の改善に効果を発揮することも報告されています。

 渇望(craving)や依存的行動に対する オープン・モニタリング瞑想 の効果についてご理解いただくには、マインドフルネス瞑想研究の第一人者であるマサチューセッツ大学医学部の精神科医 Judson Brewer博士のビデオをご覧いただくのが良いかと思います。

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  Brewer博士 は、fMRIを使ったニューロメディテーションについて素晴らしい研究をされています 1) 。私たちの提供するニューロメディテーション・システムのアルゴリズムにもBrewer博士 の研究成果が大いに貢献しています。

 オープン・モニタリング瞑想 は、”Let go”の術を修得する瞑想とも言われ、「手放すこと」、「執着からの解放」を体得することで、慢性的なストレスによる疲労や不安を改善することが期待できるとされます。

 Jeff Tarrant 博士の意見を参考にしますと、以下の項目が良く当てはまる方々にオープン・モニタリング瞑想が有効と考えられます2)。 (クリック>> 「 NeuroMeditation Institute 」 ホームページ)

気づかないうちに 『自動操縦』状態になってしまっていることが多い

自分の感情に巻き込まれてしまうことが多い

自分に関連するお話しが頭の中で始まってしまうことが多い

身体の緊張や風、温かさなどの感覚に鈍感なことが多い

嫌な考えやイメージ、感情に心が支配されてしまい、頭から離れないことが多い

頭に浮かぶことに対して、良いとか悪いかという判断をしてしまうことが多い

困難な場面に遭遇したとき、一呼吸置かずにすぐに反応してしまう

一度決めたことに執着してしまい、計画を柔軟に変えられないことが多い

  ニューロメディテーションとして オープン・モニタリング瞑想を実施する場合にターゲットとなる脳内ネットワークは、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」です(クリック>>「脳のネットワーク」)。

 多くの研究から前頭部正中部でのシータ波(Fm Θ)が、 オープン・モニタリング瞑想 や デフォルト・モード・ネットワーク(DMN) と関係することが知られています。Scheeringaらの研究によりますと、 シータ波(Fm Θ) の活動は、 デフォルト・モード・ネットワーク(DMN) の活動と負の相関関係を持つことがわかっています 3) 。後頭部のキーとなるHub領域へのアプローチを組み合わせることにより、その効果はより強くなります 4)

 シータ波(Fm Θ) は、不安軽減との関連性がこれまでの研究から確認されています。例えば、Inanagaは、 大きなシータ波(Fm Θ)を示す者ほど、状態不安および特性不安のスコアが低い傾向を持つことを報告しています 5) 。Shapiroの報告では、瞑想中に観察される前頭部の シータ波 は、状態不安と特性不安レベルの低下と関連することがわかっています 6)

 従いまして、フォーカス・アテンション瞑想とオープン・モニタリング瞑想との使い分けで大切なポイントは、瞑想による不安低減効果をより期待したいときには、 シータ波(Fm Θ) の増強を目的としたオープン・モニタリング・ニューロメディテーションが有効ということになります 2) 。STAI(クリック>>)などの質問紙で不安スコアの程度が高めの方は、この瞑想法を試してみることが効果的な可能性があります。

【文献】

  1. Judson Brewer and Kathleen Garrison. The Posterior Cingulate Cortex as a Plausible Mechanistic Target of Meditation:Finding from Neuroimaging. Annals of the New York Academy of Science 1307(1):19-27.2014
  2. Jeff Tarrant. Meditation Interventions to Rewired the Brain: Integrating Neuroscience Strategies for ADHD, Anxiety, Depression & PTSD. Wisconsin:PESI Publishing&Media.2017
  3. Scheeringa R et al. Frontal theta EEG activity correlates negatively with the default mode network in resting state. Int J Psychophysiol. 67(3):242-51. 2007
  4. Collura TF & Frederick JA. Handbook of Clinical QEEG and Neurotherapy. NewYork:Routledge. 2017
  5. Inanaga K. Frontal midline theta rhythm and mental activity. Psychiatry Clin Neurosci. 52(6):555-66.1998
  6. Shapiro, D.H, Meditation: Self-Regulation Strategy and Altered State of Consciousness. MN:AldineTansaction.2008
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