ここでようやく、私たちが今後みなさまにご提供する計画となる「 ニューロメディテーション(NeuroMeditation) 」に触れることができます。
ニューロメディテーション(NeuroMeditation) とは、瞑想(メディテーション)に脳科学、神経科学を意味する「ニューロ」という接頭語を付けた表現となります。
神経科学的手法(ニューロ)+ 瞑想(メディテーション)
= ニューロメディテーション
脳科学・神経科学的手法と瞑想法が融合したメンタルトレーニング技術が、 ニューロメディテーション(NeuroMeditation)です。 瞑想(メディテーション)とは、脳のネットワークをターゲットにした訓練体系というお話をさせていただきました ( クリック>> 「脳のネットワーク」)。
科学的な瞑想トレーニングの実現には、脳のネットワークそのものにアクセスするテクニックが不可欠となります。 ニューロメディテーション(NeuroMeditation) は、 「ニューロフィードバック(Neurofeedback)」 という神経科学的な手法を瞑想に応用した技術です 。
ニューロメディテーション(NeuroMeditation) と 「ニューロフィードバック(Neurofeedback)」 、少しややこしいですが区別しておきましょう。
まず、ニューロフィードバック(Neurofeedback)から説明します。これはバイオフィードバック(Biofeedback)の一種であり、脳の活動状態に関する情報を主に脳波を使ってフィードバック信号として提示することで、脳機能のセルフコントロールや自己調整(self-regulation)の力を向上させる方法ということになります1-3)。柔軟でしなやかな脳をつくる、いわばこころのストレッチ技術のようなものになります。
ニューロフィードバック(Neurofeedback) では、脳の活動状態が望ましい状態にあるか、否かを、聴覚または視覚刺激、触覚刺激を使ったフィードバック信号を通して被訓練者(trainee)に伝えます。
「望ましい状態」とは、頭皮上に配置したある電極で記録された脳波を構成する周波数成分(Delta:1-4Hz、Theta:4-8Hz, Alpha:8-12Hz, SMR:12-15Hz, Beta:15-20Hz, High-Beta:20-30Hz, Gamma:35-45Hz等)の振幅やパワー値、位相情報等のパラメータをリアルタイムに計算することで、この値と設定した基準値との関係性から表現します。
被訓練者の症状や事前に行う定量脳波検査(QEEG:Quantitative Electroencephalogram)の結果を考慮した上で、脳波の周波数に応じて「望ましい状態」が決まります。トレーニング中の脳波から計算されたパラメータが基準値を超過する状態が「望ましい」と判断されることもあれば、基準値を下回る状態を「望ましい」と判断する場合もあります。
実は、この ニューロフィードバック(Neurofeedback) はそれほど新しい概念ではありません。海外をベースに、数十年にわたる科学的な研究が地道に行われてきた技術となります。
ニューロフィードバック(Neurofeedback)を実施する には脳波計を必要とするため、以前は特殊な研究環境下や一部の臨床現場でのみ実施されていましたが、近年のITの進展に伴い、正しい脳波計を選ぶことでわたしたちの生活の中でも利用できるようになりつつあります(どのような脳波計で実施することが必要か、この点つきましては改めてご説明させていただく機会を設けます。 クリック>> 「Tools 脳波計」)。
ニューロフィードバック(Neurofeedback) は、注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム障害、不安症、うつ病、PTSD、てんかん、睡眠障害、薬物依存、統合失調症、学習障害、頭痛などの症状緩和や治療を目的に、薬物療法や一般的な心理療法等の補完的な訓練として、主に国外の臨床でも用いられています1-4)。
ニューロフィードバック(Neurofeedback) の適応範囲は拡大しつつあり、健常者の精神的健康の増進、エンハンスメントを目的した利用も盛んとなっています(この領域での利用目的は、“Peak Performance”, ”Brain Fitness”などと呼ばれることもあります)。さらに、スポーツ選手や音楽家、芸術家などのパフォーマンス向上を意図した利用も報告されています。
最近では、スキージャンプの小林陵侑選手が、競技時に直面する極度の緊張やプレッシャーをコントールする方法として、このニューロフィードバック(Neurofeedback)を採用して活躍したことが話題となりました(クリック >> NHK スポーツストーリ)。
ニューロメディテーション(NeuroMeditation)は、このニューロフィードバック (Neurofeedback) を、瞑想法のトレーニング対象となる脳のネットワークの自己調整(self-regulation)に応用するテクニックということになります 。
ニューロメディテーション(NeuroMeditation) では、上記①-③の段階に ニューロフィードバック (Neurofeedback) の技術を活用します4,5) 。
■ ニューロフィードバック (Neurofeedback) に不可欠な脳波計をどのように選ぶべきか?
この点については クリック>> 「Tools 脳波計」
【文献】
- Marzbani H, Marateb H R, Mansourian M. Methodological Note: Neurofeedback: A Comprehensive Review on System Design, Methodology and Clinical Applications. BCN. 2016; 7 (2) :143-158
- Demos JN. Getting Started with EEG Neurofeedback(2nd ed). NewYork:W.W.Norton. 2019
- Collura TF. Technical Foundation of Neurofeedback. NewYork:Routledge. 2014
- Collura TF & Frederick JA. Handbook of Clinical QEEG and Neurotherapy. NewYork:Routledge. 2017
- Jeff Tarrant. Meditation Interventions to Rewired the Brain: Integrating Neuroscience Strategies for ADHD, Anxiety, Depression & PTSD. Wisconsin:PESI Publishing&Media.2017